誰が話すか?
「あんたがしゃべったって売れないよ!」。
あなたはこんな言葉を言われたことがありますでしょうか?
しかも上司から。(笑)
実は、この言葉は私が20代の新人時代の頃に浴びせられたものでした。
誰に言われたのか?
それは当時勤めていた会社の女性社長にでした。
その女性社長はすご腕セールスウーマンで、100万円前後の健康食品や美容器具などの高額商材をド田舎で売って売って売りまくっていた方でした(もう引退されているおばちゃんですが)。
さて、ではなぜ女性社長は20代の新人の男子をつかまえてこんなきつい言い方をしたのでしょうか?
その理由は、女性社長がサバサバした性格の人だからというのに加えて、私たち営業マンにとって売るために「ある大切な内容」を伝えたかったからでした。
その内容とは「お客様は買いたい人を選んでいる」というものです。
説得力
「お客様は買いたい人を選んでいる」。
これは私たち営業マンにとってとても残酷な内容になります。
その理由については、次の例に目を通してもらうとご理解いただけると思います。
【例】
1.「このサプリメントを飲めばダイエット効果がありますよ」と体重90キロの営業マンが話す。
2.「この新しい化粧品は肌がいっそう明るくなります」と化粧がうまくない販売員が話す。
3.「社長! 武蔵小杉(神奈川県にある駅名)の土地の価格がさらに上がります」と20歳前後の不動産業界初心者の営業マンが話す。
営業マンの説得力という視点から彼らを評価してみると……やっぱりどうしても説得力にかけてしまいます。
「おぉ、そうか♪」とはなりにくいでしょう。
基本的にお客様は赤の他人です。
初対面や数回しか会っていない営業マンには疑ってかかってきます。
騙されてはいけないので防衛本能がそうさせます。
だから上記のような営業マンに出会ったお客様は「そうですか。まぁとりあえず検討しますね」とだけ言って丁寧に商談を終わらせようとしてくるのです。
ここから分かることがあります。
それはセールストークの完成度だけでは説得力は出ないということです。
売れるセールストークには自分が扱っている「商材」も関係しているということです。
「あんたがしゃべったって売れないよ!」、この意味するところは?
女性社長はお客様が買いたい人を選んでいることを熟知されていました。
だから当時顔つきが幼かった私を見て、この子ではお客様に相手にされないだろうと一瞬で判断されたのでした。
というのも、その頃の私は単価の低い健康食品を訪問販売させられていて、あるとき当時の男性上司が(女性社長のご主人)「そろそろミシロウ(筆者)にも高額商品を持たせてみるか」と商材変更を決定したのでした。
そこで男性上司と高額商材を売るためのセールストークの練習をはじめることになりました。
たしか練習をはじめた3日目あたりだったと記憶していますが、女性社長が外回りを終え帰ってきたときに私たちの練習にバッタリ出くわしたのです。
「何やってるの?」。
男性上司は女性社長に私の商材の変更を伝えていませんでした。
だから私たちの練習姿を見て一体何をしているのかと不思議に思ったのです。
「高額商品のセールストークを練習しています」。
男性上司がそう返答すると女性社長はジ~ッと私を見ながら「あんたがしゃべったって売れないよ!」と言い放ち、社長室へと入っていったのでした。
私はあっけにとられるのと同時にふつふつと怒りの感情がわきあがってきたことを今でも忘れず覚えています。
「な、なんて失礼なババアなんだ!」と心の中で口にしていました。
もちろん男性上司もピクッと反応されていました(彼が言い出したことだからです)。
男性上司は女性社長を無視し、私を現場へと放つことにしました。
男たちの小さな反抗ですね!
私は2ヶ月間、一生懸命にその高額商材を売るために街中を駆けずり回りました。
その結果、なんと!
1件も売れませんでした……。
その高額商品の単価は約50万円。
ターゲットは主婦層。
女性社長の分析は50万円を扱うには顔つきが幼いというものでした(販売手法は訪問販売)。
ちなみに幼い顔つきとは世の中のことを何も知らなそうな雰囲気がプンプンしている人のことらしいです。(笑)
女性社長いわく、
「あんたは頼りなさそう。そのわりにはよく喋るからそれを扱うのにはまだ早い」。
とのことでした。
そして続けて、
「それよりも今の単価の低い商品でたくさんの人に出会いなさい。そしてお客様の様々な性格への対処法を覚えていきなさい」と貴重なことを優しく教えてくださったのでした。
この言葉も今でも鮮明に覚えています。
商材に合った自分を作り上げていこう
結局、私たちが販売実績を出していくためには自社商品に見合った自分になれるようにセルフプロデュースしていくことも大切であるということです。
もちろんこれは全営業マンに当てはまるものではありませんが、しかしもし自分が自社商材に見合っていないことにずっと気がつけなかったら苦労だけが待っていることになります。
私はいつも、扱う商材に見合った自分になれるように意識しています。
やり方は自分が客だったらどんな営業マンに担当されたいかを想像してその内容を盛り込んでいっています。
もしこの記事の内容に反応してしまった人がいるとすれば、ぜひあなたの扱う商材と自分が合っているかどうかを再確認してみる時間をとってみてもいいかもしれません。
どんなにセールストークが素晴らしくても売れないという不思議な現象が起きるのがセールスの世界です。
以上、陰ながらではございますが、あなたの益々のご活躍を心より応援しております。
一二 三四朗(ヒフ ミシロウ)